債務の弁済は自由にしてはならない
清算手続きは破産とは異なり債務超過に陥っているわけではないので、普通に考えるとすべての債務の弁済が可能です。
しかし、売掛金を回収できるとは限りませんし、不動産を金銭に変えられるか保証の限りではありません。
そこで、清算手続きにおいては公正、公平な弁済をしなければなりません。
債権者に解散のことを知らせる
まず会社が把握している債権者に対して解散のことを知らせて、清算手続きにおいて弁済することを通知します。
これを「知れたる債権者」への催告といいます。
具体的には、債権者に対して債権申出催告書とともに債権申出書を送り、債権申出書を返送するようにお願いをします。
知れたる債権者の範囲
原則として会社が把握している債権者すべてが「知れたる債権者」の範囲に含まれます。
もっとも、債権者が多数である場合には少額の債権者については通知を省略することもあります。
清算手続きではいずれすべての債権者に対して弁済するので、そういう意味では通知を省略しても同じです。
しかし、会社からの通知ではなく他の会社から貴社が清算手続きをすることを知った場合にクレームを言ってくる会社もあるでしょうし、万が一清算手続きにおいて弁済漏れとなれば再度手続きをやり直しをさせられる可能性すらあります。
したがって、会社が把握している債権者すべてに債権申出催告書を送るのが無難です。
知れたる債権者への催告
会社の帳簿等から買掛金の存在が分かりますので、会社において把握している債権者に対しては個別に催告します。
知れたる債権者への催告の例(債権申出催告書)
令和x年1月25日
債権者
▲▲株式会社 御中
株式会社〇〇商事
清算人 〇〇 〇〇
催 告 書
拝啓 時下ますますこ清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、当社は株主総会の決議により、令和x年1月25日解散いたしましたので、来る3月末日までに別紙により貴社の当社に対する債権をお申し出下さい。
なお、本書は会社法第499条の規定によりお送りするものであることを申し添えます。
敬具
債権申出書の例
(別紙)
株式会社〇〇商事
清算人 〇〇 〇〇 殿
債権者
▲▲株式会社
代表取締役 △△ △△
債権申出書
当社の貴社に対する債権を下記のとおり申し出ます。
発生年月日 債権の原因 金額(円)
合計(円)
官報での公告
それだけではなく、官報において解散する旨を記載し、もし個別の通知を受け取っていない債権者は会社に知らせるよう求めます。これを公告(広告ではありません)といいます。
具体的な方法
官報関連であればどのウェブサイトでも構いませんが、例えば「官報と官報公告・決算公告」というウェブサイトを見てください。
この中で、会社なら上から1段目に「解散公告」という欄があります。
ここに公告方法の中からやりやすい方法を選んでください。
公告方法は、WEB申込、メールに原稿添付して申込、WEBサイトで原稿添付して申込、FAX、の4つがあります。
解散広告の例
解散公告
当社は、令和●●年●●月●●●日開催の株主総会の決議により解散いたしましたので、当社に債権を有する方は、本公告掲載の翌日から二箇月以内にお申し出下さい。
なお、右期間内にお申し出がないときは清算から除斥します。
令和●●年●●月●●●日
東京都港区赤坂●丁目●番●号
株式会社●●商事
代表清算人 ●● ●●
清算から除外される債権者
官報で公告してから2ヶ月が経過しても申し出ない債権者は、清算から除外されてしまいます。
もし株主に対する残余財産の分配まで終わってしまうと、その債務への弁済はされません。
ただし、知れたる債権者については清算から除外されません。
おわりに
清算手続きにおける債務の弁済についてはこのとおりですが、私がサポートする場合にはアドバイスどおりにして頂ければそれで手続きを進められますので、債務の弁済についてあまり心配しなくても大丈夫です。
とにかく清算手続きを検討する段階では「この取引先にだけは支払いを済ませておこう」というのはお止めください。
一旦は支払いをすべて止めることです。
弁護士 芦原修一