残余財産の分配は株主への分配

清算手続きにおいて、債務をすべて弁済したあとに残る資産は、会社の所有者である株主に分配されます。
これを残余財産の分配といいます。

一部の債務についてその存在や額について争いがある場合には、見込まれる最大額を除外しておけば、残りの財産を株主に分配することはできます。
ただそれでも思ったより多額になったということがありますので、租相当慎重に分配しなければなりません。
私がサポートする場合にはおそらくすべての債務の額が確定して支払いを終えてからの残余財産の分配になります。

また、株主が一人だけであれば分配方法それ自体には争いが生じないのは当然です。

残余財産の計算方法

株主が複数の場合には残余財産の計算結果で分配額が変わります。

不動産の評価

評価方法についてはいくつか考えられますが、株主全員の合意が得られる方法を採るのが無難です。
合意が得られない場合には、時価で評価するのが一般的ですので、2社以上の不動産会社の評価証明を取得すると良いです。

有価証券の評価

公開会社の場合

株価は明確ですが、結局は金銭に替えるのであれば金銭に替えてから分配すれば良いです。
株式のままであれば、解散決議の日を基準に評価するなど公正・公平な方法を採ります。

非公開会社の場合

これはかなり難しいです。
誰も欲しがらない株式であれば思い切ってその非公開会社に自社株買取を依頼するのも一つです。

費用の控除

この残余財産の分配の段階まで来ると清算手続きも終盤ですが、清算が結了するまでは費用が掛かります。
 ・清算人に対する報酬
 ・賃料
 ・給与
 ・弁護士報酬
 ・登記費用
 ・その他諸費用
これらの費用を計算したうえで、残余財産から控除しておく必要があります。

税金の控除

清算手続きにおいて不動産を売却したり有価証券を売却したりしていると税金がかかります。
また、当年度の所得税等も課税されます。
それらについては税理士さんと相談のうえ額を確定させておいてください。
そして残余財産から分配前に控除してください。

残余財産の分配は株式数に応じて

当然ですが、財産の分配は株式数に応じて行われます。
もっとも残余財産の分配についての優先株式が発行されている場合にはそれを持つ者に優先的に分配することはできます。

金銭分配の原則

残余財産の分配は金銭分配が原則です。
もっとも、株主間である程度話し合いがなされているなら、この人には不動産をそのまま、この人には有価証券をそのまま、というように現物分配も可能です。
というのも、話し合いができていないと、株主には金銭分配請求権がありますので金銭分配を余儀なくされるからです。

おわりに

清算手続きにおける残余財産の分配についてはこのとおりですが、私がサポートする場合にはアドバイスどおりにして頂ければそれで手続きを進められますので、残余財産の分配についてあまり心配しなくても大丈夫です。

声の大きな株主がいて「早く分配してくれ」と言われても、不動産等の評価方法、費用・税金の控除などありますので、すべてきちんとしたうえで分配することが大切です。

弁護士 芦原修一