内定の実態はさまざまである
最高裁は、内定と一言で言ってもその実態はさまざまであるから、事実関係に即してその法的性質を明らかにしなければならない、としています。
したがって、「内定を出した」、「内定者」という言葉で何もかもが決まるわけではありません。
一般的には「始期付・解約権留保付の労働契約」とされる
もっとも内定というのは、多くの場合「4月から内定者が入社する契約」であることが一般的です。
そうすると最高裁がいう「始期付・解約権留保付の労働契約」とみるのが相当です。
「始期付き・解約権留保付き」?
始期とは労働を開始する時期のことです。
始期付=4月から労働を開始する、ということです。
中途採用なら今すぐに働くということになりますが、内定の場合は大学を卒業してからでないと働けないのでこうした「始期付き」の労働契約になります。
そして、解約権とは会社が契約を解約する、つまり内定の取消しです。
これは内定者に何か問題があった場合には内定を取り消しますよ、ということです。
これをもって内定は解約権を留保する、解約権留保付の労働契約ということになります。
これが「始期付・解約権留保付の労働契約」の意味です。
このとおり内定は一般的な労働契約をカスタマイズした形になります。
内定という言葉は多くの場合、学生向けですが、それだけではなく別の会社に働いている人に声を掛けて入社してもらう場合にも使います。
コロナで内定取消しの場合には…
もっとも、解約権が留保されているから自由に解約権を行使できるわけではありません。
あくまでも労働契約ですので解雇とまではいかないまでもそれに近い措置ですので、相当性がなければ解約権を行使することはできません。
さらには、コロナウイルスの影響で内定を取り消したという場合、これは内定者自身には落ち度はありませんので、内定者の行為を理由に内定取消しをすることはできません。
その場合には、他の記事でも説明していますが以下の4つの要件(要素)を満たす必要があります。
1)人員削減の必要性
2)解雇回避努力義務
3)人員選定の合理性
4)手続の相当性
これは整理解雇の要件(要素)です。
内定取消しは解雇ではありませんが、経営不振を理由とした労働契約の解約という点で類似していますので、これらの要件(要素)を使うことが一般的です。
弁護士 芦原修一