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労働審判は短期決戦とよく言われます。
ではどのくらい短期なのか、実感を持って頂くために日数で現わしてみました。

私は会社側(使用者側)に立って仕事をしていますので、この記事も会社側の視点で作成しています。

この記事をお読みになれば、どのサイトよりも労働審判手続きについての流れとスケジュール感が掴めます。かなり詳しく説明をしていて私のサイトの中で最も長い記事です。必要な部分を中心にテンポよく読み進めてください。
なお、この記事では東京地方裁判所本庁における労働審判手続きを想定していますが、その他の地方の裁判所でもほぼ同じです。

労働審判手続きの流れのチャート図
裁判所ウェブサイトより
弁護士 芦原修一

下の目次をしっかりと読むだけでも労働審判手続きの流れとスケジュール感が掴めます。

1日目 労働審判申立書が会社に届いた

これが労働審判手続きの出発点になります。
「訴えられた!」と驚かれたり憤慨されたりするかもしれませんが、ここは落ち着いて対応を考えましょう。
労働審判のスケジュールの中でも最も重要な日と言っても過言ではありません。

申立書は数十枚ですので何を見ていけば良いかを確認しましょう。
弁護士に相談される前にでもこれらのポイントを見ておけば、相談の申込みの際に上手く状況を伝えられます。

第1回労働審判手続呼出状及び答弁書催告状

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この「第1回労働審判手続呼出状及び答弁書催告状」で見るべきは次の3点です。

  • 期日
  • 出頭場所
  • 答弁書提出期限

これら3点はいずれもページの下の方に書かれています。

期日」とは、第1回労働審判手続期日のことです。期日という言葉からすると「〇月●日」と思われるかもしれませんが、法律上の期日とは「〇月●日△時▲▲分」までを言います。実際にこの「第1回労働審判手続呼出状及び答弁書催告状」でも期日として「〇月●日△時▲▲分」まで書かれています。
この「期日」から逆算してスケジュールを組むこととなります。弁護士への相談を申し込む場合には同時にこの「期日」を伝えましょう。

出頭場所」とは、労働審判手続期日が開かれる裁判所のことです。出頭というと一般的には「警察署に出頭する」というときに使うので余り嬉しくありませんが、気にしないようにしましょう。

答弁書提出期限」とは、文字通り答弁書を提出する期限のことです。多くの場合、期日の1週間前あたりに設定されています。

「所要時間は、2時間30分程度」というのはあくまでも目安です。
これよりも短くなることはあまりなく、長くなることの方が多いと思います。

この形式の第1回労働審判手続呼出状及び催告状は東京地方裁判所によるものですが、他の裁判所でもこれら「期日」、「出頭場所」、「答弁書提出期限」は必ず書かれています。

期日変更はできるのか

期日の変更、つまり第1回労働審判手続期日の日程変更はできるのか、という点が気になる方もおられるでしょう。
例えば「その日は大切な取引先との打ち合わせがある。」ということがあるかもしれません。
その場合は先約があるのですから裁判所に期日の変更を申し出てください。
ただし、申立書を受け取って直ぐに申し出なければ、労働審判員の選定が終わってしまっていてその申し出が受け入れられないことがあります。
したがって、もし期日の変更を希望される場合には申立書を受け取ったその日のうちに裁判所に申し出てください。

なお、労働審判について弁護士に依頼する場合には、その依頼する弁護士のスケジュールも併せて考えなければならないので、法律相談、依頼をする際に日程についてよく相談をしてください。
例えば私が過去に法律相談を受けた件では、私の海外出張期間に第1回労働審判手続期日が決められていましたので、私から裁判所に対してその旨を上申して3週間後に変更してもらったことがあります。

以上のように、期日変更を希望する理由と期日変更を申し出る時期により、期日変更の希望が受け入れられるかどうかが決まります。
これは裁判所の運用次第としか言えませんので、希望すれば必ず期日が変更されるとは限りません。

もし期日を無視して欠席したら

そんなことはしないとは思いますが第1回労働審判手続期日呼出状を無視して期日を欠席したらどうなるか。

答弁書を提出せずに期日を無視して欠席した場合には、申立人(労働者)の主張と証拠だけで労働審判が出されることがあります。
これに対して異議を出せば民事訴訟で争えはしますが、労働審判の手続きを無視したということは軽視したことになりますので、裁判官の印象はとても悪いものになるでしょう。

また、答弁書だけを出して欠席というのは考えにくいですが、この場合も出席している申立人(労働者)の主張が通りやすくなりかなり不利になります。

したがいまして、期日を無視して欠席するというのは最悪手ですのでそのようなことはしないようにしましょう。

申立書で見るべきポイント

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この「労働審判申立書」で最初に見るべきは次の2点です。なお、答弁書を作成し裁判所で申立人(従業員)と争うにはすべて細かく見るべきは当然です。次の2点は、あくまでも最初に見るべきポイントです。

  • どういった労働審判事件か
  • 申立ての趣旨

どういった労働審判事件か

「どういった労働審判事件か」は、ページの初めの方に書かれています。
「地位確認等請求労働審判事件」なら退職、解雇、雇止めを争う主旨です。稀に「解雇無効確認請求労働審判事件」と書かれていることもあります。
「未払賃金等請求労働審判事件」なら残業代請求の場合が多いです。直截的に「残業代請求事件」と書かれていることもあります。また「時間外手当等請求労働審判事件」と書かれていることもあります。
「退職金等請求労働審判事件」ならそのとおり退職金の支払いを請求しています。
「配転命令無効確認請求労働審判事件」なら転勤、転属を争う主旨です。
「損害賠償請求労働審判事件」ならそのとおり損害賠償の支払いを請求する主旨ですが、労働者の立場から会社に対してする損害賠償請求事件は主にセクハラ、パワハラを原因とするものが多いです。あとは安全配慮義務違反もあり得ます。

「地位確認『等』確認請求労働審判事件」と『等』が付いていれば他の請求も併合しています。
例えば、地位確認と賃金請求を同時に請求する場合が多いです。

申立ての趣旨

上記の労働審判事件名と合わせてこの申立ての趣旨を見れば、申立人がどういう請求をしてきてるかがおよそ分かってきます。

「申立人が、相手方に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する」とあれば退職、解雇、雇止めのいずれかを争ってきています。これは労働審判事件名のうち「地位確認請求労働審判事件」とセットで記載されます。

「申立人が、相手方●●支店(新部署)に勤務する雇用契約上の義務のないことを確認する」とあれば転勤、転属を争ってきています。これは労働審判事件名のうち「配転命令無効確認請求労働審判事件」とセットで記載されます。

あとは金銭請求ですので、いくら請求しているかを確認しましょう。「年〇分の割合で…」の部分は無視しておいて構いません。ここでは大まかにどの程度の金銭請求をしてきているかを知れば十分です。

労働審判手続の進行に関する照会書

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弁護士に相談・依頼する場合には空欄のままこの書面を弁護士に手渡すかデータを渡せば、あとは弁護士が空欄を埋めて裁判所に提出します。

もしご自身で書き込む場合には次のようにしてください。
「1 連絡担当者の氏名等」は、そのとおりに書いてください。
「2 弁護士に代理人を依頼する予定」は、ご意向がはっきりしていればそのとおりにチェックを入れ、はっきりしていなければ未定にチェックを入れてください。
「3 申立人との事前交渉」は、どちらかにチェックを入れるだけにしましょう。
「4 調停(話合いによる解決)について」も、どちらかにチェックを入れるだけにしましょう。
「5 その他…」は空欄で構いません。法的に不利になることもあるので余り書き込まない方が良いです。

この下のリンクではもう少し詳しく説明しています。

2日目 労働審判を依頼する弁護士を探す

弁護士に依頼する場合にはどのようにすれば良いかを見ていきましょう。
労働審判手続きのスケジュールは非常にタイトですので申立書を受け取った日か次の日には弁護士への相談を検討してください。

労働審判について弁護士以外に依頼してはいけない

労働審判手続きはあっという間に決着がついてしまう手続きです。
そして最終的に出される労働審判に対して異議を出して通常訴訟に移行することはできますが、その通常訴訟において労働審判の結論が相当程度尊重されます。
したがって、労働審判は重要なのですがその中でも重要な答弁書の作成と当事者以外での労働審判手続きへの参加は弁護士以外にはできません。

例えば、インターネット上で労働審判の対応を請け負っておられる他士業の方をお見掛けします。
しかし、司法試験に合格していないと法的素養がなく答弁書を的確に作成することができませんし、そもそも他士業の方は少なくとも東京地方裁判所においては労働審判手続きがされる部屋に入ることができませんので満足なフォローができません。

したがって、労働審判について弁護士以外に依頼をしてはいけません。

弁護士 芦原修一

もっとも、他士業の方が会社の顧問として諸事情に詳しい場合には労働審判の対応について最初に相談するというのは良いことだと思います。
また、他士業の方に事情を伺わなければならない場合には、参考人として労働審判手続きへの出席が許されることがあります。

では弁護士はどのように選ぶべきか

まず、弁護士に労働審判手続きの経験がなければ依頼しない方が良いです。

普段、労働者側に立っているか、会社側に立っているかは関係ありません。私は会社側に立っていますが、過去に労働者側に立って仕事をしたことが今に活きていますのでそうした弁護士の立ち位置は表裏一体だと思ってください。

法律事務所に所属している弁護士の数は関係ありません。
なぜなら、形式的に答弁書に記載する弁護士の数が多くても、1つの労働審判の案件を担当するのは1人だからです。
中には2人で担当することもありますが、2人で答弁書を作成することは却って難しく1人で作成して他の1人がチェックする程度の関与になります。それも却ってミスが起こりやすいです。なぜなら、チェック者がいると「絶対に自分が100%の書面を作り上げるぞ」という気概が生まれないからです。弁護士も人間であり弱い部分があるのでどうしても「チェックしてくれる先輩弁護士がいるからこれくらいで良いだろう」となり、チェック者も「自分の担当ではないしメインの担当者がしっかりとやってくれるだろう」となりがちなのです。

このことは裏を返せば、申立書にズラッと弁護士名が並んでいたとしても気にしなくても良いということです。要は威嚇しようとしているだけで、実際に担当するのは1人です。会社を経営されている方なら理解できると思いますが、すべてのプロジェクト・業務に従業員全員をつぎ込むかというとつぎ込めません。そして、労働審判手続きの性質上、複数の弁護士で担当すると却って業務効率が悪くなるので、1人の弁護士で担当するのが効率が良いのです。

また、これは個人的な意見ですが、顧問契約の締結を提案する弁護士には労働審判の対応を依頼しない方が良いと思います。
そうした弁護士は労働審判の依頼を営業ツールとして捉えていて顧問契約の締結を目的としており、あまり労働審判を重視していないことが多いからです。
また、複数の相談者から聞いたのは、月額の顧問料は安いが1年契約で中途解約権がなく12ヶ月分の顧問料の支払義務があるというものでした。これですと却って高くなります。
労働審判の対応に自信があるならその対応についてしっかりとした弁護士費用を請求できるはずなので、私としては労働審判の対応単体で弁護士費用の見積もりをする弁護士の方が信頼できると思います。

弁護士 芦原修一

顧問契約の締結は、労働審判手続きを共に戦って解決した後に検討すれば良いと思います。
共に戦った過程で信頼関係が出来上がれば自然とそういったお話にもなるでしょう。

可能な限り早い日にちに面談を入れようとする弁護士は労働審判向きです。
なぜなら、労働審判は短期決戦であり1日1日が貴重だからです。
「労働審判は短期決戦です!」と謳っておいて「ご相談は10日後で」となると労働審判のことを分かっていないと言わざるを得ません。

インターネット上の知識でもって弁護士の力量を測ることは難しいです。
事案というのはケースバイケースであってそのインターネット上の知識が特定の事案に当てはまるとは限らないからです。
よほど「本当だろうか」というようなことを言う弁護士がいたとして、その事案が特殊かもしれませんので、疑問点を穏やかに尋ねてみるのは良いでしょう。
それで淡々と答えてくれればその事案が特殊である可能性が高まります。

最後に、労働審判や訴訟などの法的紛争に慣れていなければ技術的なところは判断が付きにくいのですが、相性は直感で分かるところが大きいです。
弁護士を信頼できなければ労働審判を戦えないのですが、その信頼は相性が合うことで得られます。

インターネット上の情報だけでも以上について何となくは分かりますので、以上を踏まえつつ弁護士を探しましょう。
相性についても、文章で何となく見えてきます。
ただ、顔写真で判断するのは止めた方が良いです。会ってみると全然違ったということもよくあります。私なども今は髭を生やしておらず眼鏡を掛けているのでおそらくそう思われるでしょう。

労働審判の弁護士費用(会社側)※実費その他を除く

法律事務所Total着手金報酬金顧問契約
弁護士法人A不明××月5.5万円以上
B法律事務所不明33万円~経済的利益の11%×
弁護士法人C77万円44万円33万円×
弁護士法人D不明99万円別途見積もり×
労働審判の弁護士費用(会社側)の比較表 ※消費税込み

Googleで会社側に立っている弁護士の労働審判に関する弁護士費用を調べてみました。経済的利益の算定によってはB法律事務所の弁護士費用が最も安くなる可能性がありますが、着手金が「33万円以上」とされているので実際に見積もると高額になる可能性もあります。

労働審判について弁護士が依頼を受ける場合には相当の準備時間がかかりますので、安く受ける弁護士はほぼいないと思います。
また、経済的観点も重要ですが、何よりもしっかりと対応してくれる弁護士に依頼するのが一番ですので、弁護士費用の違いだけを気にするべきではないとも思います。

3~6日目 弁護士と面談する

弁護士との面談に際しての準備

弁護士との面談日がやってきました。
面談の目的はその弁護士に依頼するかを決めることです。
実際に面談をして弁護士に会って話をしますと、直感的な相性は直ぐに分かります。
「嫌な人だなあ」と思った弁護士に依頼すると後々まで何かと文句を付けたくなりますので、お互いのためになりません。そのときには依頼せずに他の弁護士を探しましょう。
繰り返しになりますが相性の良い弁護士こそ信頼できるというものです。

後は何と言っても労働審判できちんと戦ってもらえるかです。
最低限、申立書(裁判所から送られてきた証拠を含めたセット)を持参して読んでもらうことです。
弁護士に依りますが面談日までに時間があると事前にファクスかスキャンデータで受け取って読みます。
何と言ってもスケジュールがギリギリですし、後に追加で色々と尋ねるよりもその方が面談がスムーズに進められますので私はできるだけそのようにしています。

申立書を読んだうえで面談では会社としての反論を伺います。
それで公平な観点(裁判所の観点)からの意見を述べることになります。なぜなら、労働審判手続きでは裁判所の観点が大きくものを言うからです。
ザっと検討して、勝てそうなのか、負けそうなのか。
労働審判手続きの特性を踏まえてどういった解決が落としどころになりそうか。
証拠の有無を確認して、重要な証拠がある場合とない場合とで場合分けをするなど。
このように、労働審判手続きにおける道筋を見せられる弁護士が頼りになると思います。
なお、会社に不利なことも遠慮なく言う弁護士を煙たがって、耳障りの良いことばかり言う弁護士に依頼すると後で痛い目に遭います。

弁護士 芦原修一

労働関係の法律と裁判例は会社に不利にできています。
したがって、争いになった時点で理不尽にも会社が法的に押し込まれることが多いのです。
そうした状況にも拘わらず会社に不利なことをまったく言わない弁護士を信頼するのは危ないと思います。
もちろん、従業員の主張することが本当にデタラメで法的にも通らないものであれば、その限りではありません。

以上のとおり、その弁護士が信頼できるか、労働審判について道筋を示せるか、が弁護士を選ぶポイントになりますので、それを可能にするよう準備しなければなりません。
そうすると、最低限申立書のセットを準備することはもちろん、労働審判手続きを申し立てた従業員に関連する資料一切を準備することが大切です。
資料というのは物にも依りますが、関係者が口頭で主張するのとは異なり客観的に残されている物ですので証拠としての信頼性が高く、労働審判手続きでプラスにもマイナスにも働きます。
それだけに資料の有無が結果を左右しますのでそれがあるかないかが分からない状態では道筋を示しづらいのです。
したがって、関係する資料一切を弁護士との面談に持参することをお勧めします。
もちろん弁護士と事前に話してみて予めファクスかスキャンデータで送っておくというのも良いでしょう。

紛争別の関係資料

そうは言っても関係する資料とは何か、見当が付かないかも知れません。
そこで紛争別に関係しそうな資料を示します。
大量に渡ることもありますので可能な限りで面談時に弁護士に見せられるようにしましょう。
そして弁護士に依頼すると決めたなら、面談後に速やかにその弁護士にすべての関係資料を渡せるようにしてください。これは弁護士に依頼しない場合でも必要なので揃えておくべきです。
とは言え、そもそも作成していない資料もあるとは思います。その場合は仕方がないのでお持ちの限りの資料をご準備ください。

懲戒解雇又は普通解雇
  • 雇用契約書
  • 解雇通知書
  • 解雇理由書
  • 労働協約
  • 就業規則・賃金規程
  • 給与明細書
整理解雇
  • 上記懲戒解雇又は普通解雇の資料
  • 決算書(最近5年ほど)
  • 整理解雇の計画書等
未払賃金請求(残業代、時間外手当請求)
  • 求人票
  • 労働条件通知書
  • 雇用契約書
  • 給与明細書
  • 就業規則・賃金規程
  • 賃金台帳
  • タイムカードその他労働時間の算定の基礎となる資料

7日目~27日目 答弁書作成のために弁護士とメール等でやり取りをする

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申立書と関係資料を弁護士に渡してもそれだけでは弁護士は答弁書を完成させられません。
再三申し上げていますが、スケジュールが非常にタイトなので弁護士から連絡が来たら優先的に対応をするべきです。
ここでは私が依頼者にお願いする方法をお示しします。

申立書の主張の認否

答弁書における認否は、「認める」、「否認する(認めない)」、「不知(知らない)」、「争う」の4つのいずれかです。
申立書に書かれた主張全てに対してこれら4つの対応をします。

作業手順としてはまず「否認する」から入ります。
主張全てを否認するのです。
そのうえで、争うべきでもない事実(例えば申立人の氏名など)と争いたいが否定し難い事実は「認める」とします。

なぜこのようにするかというと、申立人の主張を認めた場合、その主張は正しいものと扱われ会社に不利になるからです。
誤って認めてしまうことを避けるためにこのようにします。

また、本当に知らないことは「不知」としてください。

「争う」というのは事実ではなく法的に争うという意味ですので、弁護士が付いていない場合にはこれを使うのは難しいでしょう。
したがって、法的な主張かなと思っても争うなら「否認する」でも構いません。

会社の主張

申立書では労働者側に有利なストーリーが書かれています。
それだけを読むと「なるほど、これは労働者側の言うとおりだな」と思ってしまいます。労働審判委員会のメンバーも最初に申立書を読みますのでそのような印象を持ってしまうでしょう。
その印象を引っ繰り返すには単に申立人の主張を否認するだけではなく、会社側のストーリーを作り上げていかに労働者側がおかしなことを主張しているかを労働審判委員会に伝えなければなりません。
したがって、申立書の内容に引っ張られず、会社独自のストーリーを力強く書いて印象を引っ繰り返しましょう。

可能な限り証拠を揃える

主張というのはあくまでも一方的にするものです。
裁判所に「なるほど!それは会社の主張のとおりですね」と思わせるためには、各主張を支える客観的な証拠が必要です。

必要に応じて陳述書を作成する

客観的な証拠があればすべてそれで主張を支えたいのですが、すべて揃っているということの方が稀です。
その場合、申立人の身近で接していた別の従業員の記憶に頼らざるを得ない場合があります。
その場合には弁護士がその従業員に聴き取りをして事実関係を明らかにし、会社の主張(答弁書における相手方の主張)に盛り込みます。
そのうえで関係者としてその従業員も労働審判手続き期日に来てもらい、必要に応じて労働審判委員会からの質疑に応答してもらいます。
また、諸事情によりその従業員が労働審判手続き期日に出席できないという場合には、陳述書という形式で書面を作成して、それを証拠として提出します。

答弁書の書き方について、詳しくは次の記事をお読みください。

28日目 弁護士が作り上げた答弁書を会社が確認する

弁護士が作り上げた答弁書について会社が確認します。
弁護士が書く答弁書は、会社から教えられた事実をベースとして法的な枠組みに沿って再編成したものです。
いわばノンフィクション小説のようなストーリーを法的評価を加えて作り上げるものですので、その表現について違和感を覚えることもあるかもしれません。
しかし、法的に反論するためには必要な表現だからこそ、弁護士はそのようなストーリーを作り上げていますので、その点については弁護士に従った方が良いです。
ただし、事実そのものに大きな誤りがあればその点については遠慮なく指摘してください。

こうして弁護士と会社がやり取りをして確認を終えれば、弁護士が各関係者に答弁書を送付します。

ここまでお読みになられてもご自身で労働審判の対応は難しいとお考えでしたら、下のページに移動して弁護士に依頼することをご検討ください。


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