労働審判の雰囲気はどんなものか。
裁判所によっても、裁判官(労働審判官)によっても異なります。
東京地裁は比較的雰囲気が堅い
東京地方裁判所本庁における労働審判手続きは比較的堅い雰囲気ではありますが、厳粛というほど堅くはありません。
労働審判のスケジュールと対応方法【会社向け】決定版
地方だと緩い雰囲気のところもありますし、大阪地方裁判所などに他の地方から行けば大阪弁がキツイ労働審判官(裁判官)がいて驚かれるかもしれません。
東京地裁の裁判官は同じ労働専門部で日々労働事件だけを扱うという共通点があり、労働審判手続きの進め方についてイレギュラーなことがないように徹底されているせいで比較的堅い雰囲気になるのかも知れません。
もっとも、労働審判手続きは話し合いで解決する場ですので、互いに歩み寄れるように双方の話をできるだけ聞こうとする姿勢が見られます。
労働審判手続き全体の流れとスケジュール感を掴むには次の記事をお読みください。かなり詳しく説明しています。
労働審判廷の部屋の中はこのような感じ
これは東京地裁での一例です。
これでお分かりのとおり、弁護士が間に入って当事者同士が近くならないようにするのが通例です。
労働者側に弁護士がいて、会社側に弁護士がいない場合、真横に弁護士がいることになるのでそれだけで圧があります。
また、同席しているときに会社側に対して言葉で突っ込んでくる弁護士もいます。そうしたとき会社側に弁護士がいると適切に対処できます。
もし会社側で事情をよく知っている方が複数いる場合には、この会社側のテーブルの後ろに椅子が並んでいることが多いので、そこに座ります。
手続きの進み方
労働審判手続きの初めは、労働審判委員会の3人、双方の代理人弁護士と当事者が一堂に会します。
労働審判のスケジュールと対応方法【会社向け】決定版
そして労働審判委員会から会社側・労働者側それぞれに対して申立書・答弁書だけでは分からない点について質問をして細かい点について明らかにしていきます。
争点を割り出してそれについての双方の言い分を聞いたあと、労働審判委員会の3人を部屋に残して退出します。
労働審判委員会が協議して争点についての判断をして法的にどちらが優位かの心証を固めます。
手続きの最初はこのように双方が同じように部屋に入っています。
裁判官が、申立書と答弁書を読み比べて争いのあるところ(争点)を洗い出して双方の主張を整理します。
争点と主張がはっきりしたところで双方退席し、裁判官と2人の労働審判員(この3人を労働審判委員会といいます)が協議し手続きの方向性を決めます。
この後、労働審判委員会は一方だけを部屋に呼び出して心証を告げて、落としどころを探ります。
労働審判のスケジュールと対応方法【会社向け】決定版
そして入れ替わって他方を呼び出して同じように心証を告げて落としどころを探ります。
これを何回か繰り返して互いの落としどころが一致すると調停が成立するのです。
しばらくすると、一方だけが呼び出されます。会社のときもあれば労働者のときもあります。あまり順番は気にしなくても良いです。
そこで労働審判委員会のその案件に対する心証を告げられます。そのうえでどのあたりなら和解ができるかを聞かれます。
このあたりは駆け引き的要素がありますが、あまりハッタリを言って相手が引いてしまったら困りますので、ある程度の要求を答えます。
なお、「労働審判における交渉」では駆け引きについて詳しく解説しています。
一方が終われば他方が呼び出されて同じようなやり取りがなされます。
ここで互いの要求が明らかになるのです。
双方の要求を知っているのは労働審判委員会だけで会社・労働者は互いに相手の要求を知りません。
こうしてここから具体的な交渉に入り、最終的に和解するかどうかを決めます。
和解できなければ労働審判が出される
もし落としどころが一致する兆しが見えなければ、今回は第1回期日ですので第2回期日を設定します。
先の話になりますが歩み寄りがなければ労働審判が出されます。
もし落としどころが一致する兆しが見えなければ、今回は第1回期日ですので第2回期日を設定します。
先の話になりますが歩み寄りがなければ労働審判が出されます。
互いの要求が合わず和解ができなかった場合は、労働審判委員会が決めた労働審判という判決に似たものが出されます。
これに従うのも良いですし、不服であれば2週間以内に異議を出せば労働審判の効力は失われて民事訴訟へと移行します。
私の経験から言いますと、異議を出して民事訴訟で勝負することはあまりお勧めしません。
民事訴訟を指揮する裁判官は、もちろん労働審判官とは異なりますが、労働審判で出された結論を重視する傾向にあります。
したがって、感情だけで異議を出すことは止めておいた方が良いです。
もっとも、労働審判官の手続きの進め方やその判断があまりにも不合理だというときには、むしろ異議を出して民事訴訟で勝負するべきです。
弁護士 芦原修一
ここまでお読みになられてもご自身で労働審判の対応は難しいとお考えでしたら、下のページに移動して弁護士に依頼することをご検討ください。