皆さま、こんにちは!弁護士の芦原修一です。

今回が2回目の配信ですが、1回目の配信記事を載せたページを作りました
のでどうぞご覧ください。
今後はこのページに配信済みの記事を載せていきます。
– URL省略 –

緊急事態宣言が解除されそうではありますが再延長の可能性もまだ
残されています。
早く解除してもらいたいですが、それで感染が再拡大すると元も子も
ありませんので難しいところではあります。
徐々に暖かな日も増えてきて湿度も上がりつつありますのでそれで
何とか感染が収束して欲しいですね。

では早速、【法律ニュース】をお届けします。
気になるトピックだけでもお読みになるとためになると思います。
1.と2.は短めです。特に2.は短いです。

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1.新型コロナウイルスと会社経営(法務)
   -債務不履行が不可抗力として免責されるか

2.民法改正が会社に与える影響と対策
   -法定利率についての改正

3.最近の労働判例
   -契約社員の雇止めが無効とされた事案(山口地裁令和2年2月19日判決)
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 ◆1.新型コロナウイルスと会社経営(法務)
     -債務不履行が不可抗力として免責されるか◆ 
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新型コロナウイルスの影響で契約上の債務を履行できない場合があり得ます。
この場合、その債務不履行が不可抗力によるものとして免責されるか、
つまり契約の相手から損害賠償請求をされないかを考えました。

不可抗力とは、戦争・地震・台風など一個人、一法人ではコントロール
できない現象のことです。
契約で定められていなくても不可抗力であれば債務を約束どおり履行できなく
ても免責されます。

新型コロナウイルスの影響が一個人、一法人ではコントロールできない現象
であることは間違いありません。
しかし、ただそれだけですべてのケースで不可抗力として免責されるわけ
ではなく、代替手段をとることが困難でなければ免責されません。
また、債務不履行にも程度があり、納期の遅れが1ヶ月なら不可抗力として
仕方ないと判断されても、半年遅れは免責されないということもあります。

いずれにせよ可能な限り代替手段を探し納期を遅らせることのない姿勢が
求められます。

「コロナウイルスと不可抗力」
(https://ashihara-law.jp/corona-virus-force-majeure/)

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 ◆2.民法改正が会社に与える影響と対策
     -法定利率についての改正◆ 
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法定利率とは、利息が生じる債権(貸付金、売掛金など)について利息を
定めなかった場合でも自動的に発生する利息の料率のことです。
これまで会社間の取引では6%、個人間では5%とされていました。

しかしこれらの利率は最近の低金利とかけ離れていたため民法改正により
一律3%とされました。今後は3年ごとに見直しがされ実態に合わせる
ように調整されます。

契約書や約款などで「~の場合には商法所定の法定利率による。」のように
利率を法律に任せたような形式で利率を決めていた場合には今後発生する
利息については3%とされてしまいます。
これを防ぐためには具体的に「~%」と利率を定めてください。

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 ◆3.最近の労働判例
     -契約社員の雇止めが無効とされた事案(山口地裁令和2年2月19日判決)◆      
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1┃事案の概要
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本件は、A病院において1年間の有期契約で契約社員として勤務していた
看護師Bが雇止めされたので、雇止め無効を訴えた事案です。

雇止めとは、有期契約の更新をせずに労働契約を終了させることです。

Bは平成17年から30年までAで勤務していました。
平成29年にAの就業規則に「契約社員の雇用期間は5年を超えないもの
とする」という条項(更新上限条項)が加えられました。
つまり、就業規則上は有期雇用を5年以上継続させずに最長5年間で
期間満了による雇止めをすると定められました。

2┃注目ポイント
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就業規則上の更新上限条項は労働者の契約更新への期待を消滅させるか。

3┃注目ポイントについての裁判所の判断
━┛――――――――
平成29年に就業規則に更新上限条項が加えられる前にBの契約更新への
期待が生じていて、更新上限条項によりその期待が消滅したとは言えない、
と裁判所は判断しました。

そのうえで裁判所は本件の雇止めを無効としました。

4┃評価
━┛――――――――
本来、期間を定めた有期雇用契約では契約を更新するかは使用者と労働者双方
の合意で決まるはずです。これが契約自由の原則です。

しかし労働者保護のため、労働者の更新への期待が合理的であれば
労働契約法19条2号に該当し、期間の定めのない労働契約(いわゆる正社員)
と同視され、正社員を解雇するときと同じ解雇規制が生じて、更新拒絶が
客観的に合理的で社会的に相当でない限りは更新したとみなされます
(労働契約法19条柱書)。

本件では、最長5年で雇止めにするという更新上限条項が契約更新への期待を
消滅させるかが注目ポイントでした。
確かに、日本語そのものとしては更新上限条項があれば「ああ、私は更新され
ないのだな」と思いますが、これが許されると法律で有期雇用の労働者を
保護した意味が失われてしまいます。

使用者側としては苦しいところですが、単に更新上限条項を就業規則に記載する
だけでは契約更新への期待を消滅させることはできないことを覚えておきま
しょう。

なお、この更新上限の5年というのは意味のある数字です。
労働契約法18条1項により契約期間通算で5年を超える(5年ぴったりでは
不十分)場合、自動的に期間の定めのない労働契約に転換されます。
本件のAにおける就業規則改正はこれを意識してなされ、5年ぴったりでの
雇止めはこの18条1項の適用を免れるためでもありました。

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まだまだ寒さが続いておりますので、どうぞお身体にはお気を付けください。