コロナウイルスの実効再生産数は東京都で1.7(3月30日時点)
新たな提言は、日本全国の実効再生産数は3月15日時点で既に1を越えており、その後、3月21日から30日までの東京都の推定値は1.7だった、と発表した。専門家会議はすでに「流行シナリオ」を作成。「1人の感染者が何人に感染を広げる可能性があるか」かを示す「基本再生産数」を、それぞれ1.4、1.7、2.0を想定して流行シナリオを作成した。それによると、1.7の場合は全人口の9パーセント、2.0の場合は10.6パーセントが感染するとの推計値を出している。今回、東京都の実効再生産数を1.7と認定した。実効再生産数を基本再生産数に単純に置き換えることはできないが、実効再生産数が2に近い数値であることから、現在の感染拡大が続けば首都・東京はかなりの人口がやがて感染する可能性があることを示している。
科学技術振興機構「東京の「1人から生じる2次感染者数の平均」が1.7に かなりの人口が感染の恐れ」より抜粋
実行再生産数とは、感染の拡大具合から回復した感染者数を控除して算出される数字のようです。
実効再生産数が2.0とは、単純化すると1人の感染者が回復するものの感染している間に2人に感染させている状態を指します(これは正確には一時的に3.0になるかもしれませんが分かりやすくしたのでご理解ください)。
東京都内ではこの実効再生産数が1.7とのことです。
ある感染者は1人に感染させ、ある感染者は3人に感染させるかもしれませんが、平均すると1.7人に感染させるということです。
このように見ると感染拡大が必至ですね。
他人事ではないですが。
人の接触を8割減らせば収束
新型コロナウイルスの今後の感染の広がりについて、人と人との接触をふだんより2割減らしたとしても爆発的な感染拡大は避けられず、8割削減した場合は感染が収束に向かうとするシミュレーションを感染症の専門家グループがまとめました。専門家は「今がまさに重要で国や行政は早急に対策をとるべきだ」と指摘しています。
「人と人との接触 8割削減で感染収束へ 専門家グループ」NHK NEWS WEBより抜粋
(中略)
分析を行った西浦教授は「今のような外出自粛のお願いだけでは接触は2割ほどしか減らせず、8割削減するにはヨーロッパに近い外出制限が必要になり、国や自治体は早急に対策を打ち出すべきだ。ただ社会への影響を抑えるため医療や公共交通機関、それに物流を滞らせないような取り組みも不可欠だ。そして国民一人一人も慌てずにできることの準備を進めてほしい」と話しています。
さて、この新型コロナウイルスの東京都内での実効再生産数が1.7ということなので、これをなんとか1.0未満に抑え込まないといけません。
この1.0未満に抑え込んだ状態を収束と言います。
なぜなら、1.0未満ですといずれは感染者ゼロになるからです。
専門家は現状の1.7から1.0未満に抑え込むためには「人と人との接触を8割削減させなければならない」としています。
そしてそのためには「ヨーロッパに近い外出制限が必要になる」ともしています。
果たして日本で、東京都でそれが可能なのでしょうか。
「ロックダウン」、「都市封鎖」などの言葉が独り歩きしていますが、日本は法治国家ですので法律に従い憲法に違反しない運用をしなければなりません。
5月1日追記
このとおり4月10日時点での実効再生産数が全国0.71、東京0.53と感染収束に向かっていますね。
第二波というものがあるようなので油断はできませんが、この流れは感染収束のためには良いのではないでしょうか。
Twitter上でのご意見
こうしたご意見がありましたので、早速検討してみます。
欧米型のロックダウンは日本では不可能
ネット上では緊急事態宣言を出せば欧米や諸外国並みの強力な外出禁止令等が可能になると信じている人もいますが、それは誤りです。
残念ながら、日本においては戒厳令を頂点とする国民の権利を最大限に制限する法律はありません。
その法律がない以上、仮にそれが効果的であったとしても不可能なのです。
大きな枠組みで言いますと政府が勝手に戦争を始めないようにしているのですが、そうした憲法の枠組みの中で法律が制定されていますので、こういうときだけ強権的なリーダーシップを期待することはできません。
つまり、欧米型のロックダウンのように強制的に外出禁止命令を出すことは日本においては許されていないのです。
ましてやインドのように、外出禁止を破った者にスクワットさせたり、それらの者を鞭打ったりすることなど許されようはずもありません。
では、人と人との接触を減らすための対策と法律はないのか
ここからは特に私の意見ですが、人と人との接触を8割削減させることは現行憲法、現行法でも可能だと思っています。
それは、新型インフルエンザ特措法を駆使して、都民の協力を得つつ実現できます。
接触8割減の具体的な対策と法的根拠
満員電車の解消
これまでやり玉には上がっていませんが、満員電車の存在がある限り感染拡大は防げません。
そして満員電車を解消させるには2つあり、1)乗る人を減らす、2)電車を走らせない、の一方又は双方です。
私はいきなり2)から始めるべきだと思っています。
なぜなら、1)乗る人を減らすというのは通勤客に働く場を提供している会社に対して呼び掛けることになりますが、1日2日でそれが行き渡るとも思えず結局は2)をせざるを得ないということになり時間の無駄だからです。
もっとも、そのためには新型コロナウイルス特措法の緊急事態宣言を出すことが前提となります。
例えば、JR東日本、JR東海、東京メトロなどは新型インフルエンザ特措法施行令3条20号ヲにより指定公共機関となります。
そして、それらの指定公共機関は、同法9条により政府行動計画又は都道府県行動計画に基づき業務計画を作成します。
政府や都道府県の行動計画は、新型コロナウイルスの感染拡大のための計画ですので、必要とあれば一定期間の運転停止も視野に入れられます。
そうすると、それを受けた業務計画も一定期間の運転停止を盛り込めます。
同法53条は基本的にはこうした緊急事態においても列車の運転を確保できるようにしておくことを各指定公共機関に義務付けていますが、それも「業務計画に従って」の運転ですので、その業務計画に一定期間の運転停止を盛り込んでおけば、それも可能となります。
※4月24日追記
電車を走らせないというところまでは来ていませんね。
ただ会社の営業自粛又はテレワークの推進はそこそこ進んでいるようで、いわゆる100%以上の満員電車というのはなくなったようです。
これで人と人との接触2割減 ※個人的見解
都民の外出禁止
これを強制する規定は新型インフルエンザ特措法にも他の法にもありません。
しかし、欧米型のロックダウンほどは無理にしても、その半分くらいの効果を見込める方法はあります。
それは、都民に対して高頻度で外出禁止を呼び掛けることです。
同法45条1項により不要不急の外出を控えるよう知事が都民に要請することができます。
例えば、区役所や市役所の広報車が走り回り「不要不急の外出はお控えください」と呼び掛けても良いですし、パトカーで呼び掛けるともっと効果があるでしょう。
繁華街においてはあのDJポリスらに同じように呼び掛けてもらい、その辺りを歩きにくくさせます。
NHKでも高頻度でキャスターが呼び掛け、テロップでも呼び掛けることもできます。
同法施行令1条3号により警察庁が指定行政機関とされていますので、そうした業務をしてもらうことが可能です。
そして、同施行令3条7号によりNHKが指定公共機関とされていますので、こうした呼び掛けをしてもらうことが可能です。
また民間の放送局に任意での協力を呼び掛ければこうした公共目的ですので従わない放送局はないと思います。
※4月24日追記
DJポリスは出てきていませんし、パトカーが呼び掛けるということもありませんが、行政全体とテレビ局が高頻度で外出を控えるよう呼び掛けています。
ただ、歌舞伎町では警棒をむき出しにした警察官が巡回していて、この点は想像を超えた行動でした。
これで人と人との接触5割減 ※個人的見解
人が集まりやすい施設の運営停止
学校の休校が続いていますが、新型インフルエンザ特措法により知事から改めて休校を要請します。
デイケアセンター、保育園などの社会福祉施設の運営も停止してもらいます。
カラオケ店、クラブ、キャバクラ、映画館、劇場、スタジアム、百貨店、スーパーマーケット、ホテル・旅館、体育館、水泳場、理髪店、自動車教習所、学習塾など多数の人が利用する施設の運営も停止してもらいます。
これらの運営停止には強制力はありませんが、知事からの運営停止の「要請」があり、その要請に従わなければ「指示」が出されます。
強制力がないので「要請」にも「指示」にも従う義務はありませんが、知事が要請したことと指示したことはそれぞれ公表されます。
指示が出されたということは要請を拒んだからです。
つまりは「指示を受けた団体」という形で要請を拒んだ団体が明らかになるので、恐らく従わない団体は相当少なくなると思います。
この運営停止の要請・指示と公表は、同法45条2項から4項に基づきできます。
※4月24日追記
そろそろこの条項に基づく「要請」、「指示」、「公表」が出されそうです。
これで人と人との接触を7割減 ※個人的見解
車両の検問
ここまで列車を止め、都民の外出を禁止し、人が集まりやすい施設の運営を停止させることで、大分人と人との接触を減らせています。
しかし、都内を車両が自由に行き来しているとその削減効果が半減してしまいます。
そこで、各都道府県から応援パトカーを呼び寄せ、主要道路で検問を実施し不要不急の運転ではないか全車両確認することが考えられます。
特に埼玉県、千葉県、神奈川県から都内に入る道路での検問を強化すると効果があります。
こうなると渋滞必至ですので、このことを広く知らせておけば本当に必要でない限りは車両を運転して外出することは相当に少なくなるでしょう。
法45条1項に基づき都知事が都民に対し外出しないよう要請していることを受けて、指定行政機関である警察庁の下部組織である警視庁がその要請に関し改めて現場でお願いをするという建付けで良いでしょう。
※4月24日追記
封鎖を目的とした車両検問は実施されていません。
これで人と人との接触を8割減!
目標達成! ※個人的見解
日本型ロックダウンで感染収束は可能
このように欧米型ではありませんが日本型ロックダウンで感染の収束を目指すことは十分に可能です。
もちろん私は弁護士に過ぎず、公衆衛生学の素人なのでそこは差し引いておいてください。
もっとも、専門家が導いた人と人との接触を8割減という具体的な目標があるので、それを可能にするには物理的に目に見える人の移動と集合を停止すれば良いことは明らかだと思っています。
そして、そうした人と人との接触は、どれか一部分を強く制約しても他がザルなら効果がなくなりかねないとも思いますので、ここで私が提言した対策を一斉に実施するべきです。
それぞれ法的根拠はしっかりとあるので、政府や都知事には自信を持って決断して頂きたいと思います。
弁護士 芦原修一