はじめに
最近はニュースで各公共団体が「30代男性がライブハウスに行ってコロナに感染し…」など発表するのを見聞きします。
ニュースはプライバシーに配慮して特定できないようにしていますが、その人が通っていた職場には通知が行きフロアの従業員は全員検査をすることになりそうです。
そこで会社として気になるのはコロナに感染したことを理由として従業員に対し懲戒処分をすることができるのかということです。
第三者としての一般感覚から言うとそれだけで懲戒処分というのは泣きっ面に蜂で酷に過ぎるのではないかとも思いますが、もしそれで一日職場が閉鎖になるなどすると会社に損害が生じますし、切実な問題かもしれません。
会社が警告していなくてコロナに感染した
これは懲戒処分は厳し過ぎます。
インフルエンザにかかって懲戒処分はあり得ないように、コロナに感染しての懲戒処分もあり得ません。
今回のように自粛要請のなか遊びに出掛けてコロナに感染した
これも懲戒処分は厳し過ぎます。
今回、東京都では週末に出掛けることのないように都知事が呼び掛けていますがこれは法的な命令ではなくあくまでも「お願い」です。
法的にはそのお願いを受けるも受けないも自由。
そうするとそのお願いを受けずに遊んだからといってそれが懲戒事由に当たることはありません。
会社が特にコロナ対策のために勤務時間外に出歩かないよう警告していた
これでも懲戒処分は厳しいです。
さらに言うと、会社が従業員の勤務時間外の行動を拘束する権利はありません。
したがって、そのような警告自体が逆に違法とされるおそれがあります。
では外で遊んでコロナに感染しそれを職場に持ち込んで集団感染した場合はどうでしょうか。
この場合でも懲戒処分はできません。
結局は風邪を移したのと同じでそれで懲戒処分をすることは考えられないのと同じです。
法的根拠のある外出禁止命令に反して外出してコロナに感染し出勤して他の従業員に感染させた
これは懲戒処分の対象になり得ます。
情報としてはここまでコロナウイルスの影響は多大なものであることが周知されており、集団感染になると会社にも社会にも迷惑を掛けることは明らかです。
そうすると、他の従業員に生命・身体の危険が及ぶことを承知で外出したと言っても差し支えありません。
そして、法的根拠のある外出禁止命令が出ているにも拘わらず外出したということは、ダメだと分かっていてなお外出していますので、違法性は高いです。
そうすると、就業規則の懲戒事由にも依りますが、「他の従業員の生命・身体に危険を生じさせた」ことにより懲戒処分を検討する余地が出てきます。
令和2年3月27日時点では…
コロナに感染した従業員を懲戒処分にすることはできません。
この状況が変わればまた記事を作成したいと思います。
弁護士 芦原修一