自粛要請とは

自粛とは、自ら行動を控えるという意味です。
要請とは、他者に対して何かをする/しないことを求めることです。
したがって、自粛要請という言葉は言葉の中で矛盾が生じています。

なぜ自粛要請なのか

法の解釈を駆使すれば事実上の都市封鎖をすることは可能です。
しかし、それは警察力と軍事力が伴いますので世間からの一定の反発が予測されます。
したがって、政府や都道府県は強制力を伴う都市封鎖をすることに躊躇しているものと推測しています。
自粛要請という言葉はそうしたジレンマから生じた産物です。

自粛要請に従わないことのリスク

直接の法的リスクはない

自粛要請というのは強制力を伴わないお願いであり、できれば政府や都道府県が命令しなくても自主的に都市封鎖状態を作ってくれという適当なお願いですので、それに従わないからといって直接的な法的リスクはありません。

しかし、首相や都知事が会見を開くたびにそのトーンは上がってきていて、その中で自粛要請に従わずに行動した結果、コロナウイルスに感染して他人に感染させた可能性が生じたとすると、その感染させられた人が損害賠償請求をすることはあり得ます。
「その人だって出歩いたから感染したのでは?」というのはもっともですが、被害者意識が強い人ならそんなのは気にせず訴えることもあります。
こうしたケースだと損害賠償請求は認められないと私は思いますが、損害賠償請求を受けるだけでも負担です。

店舗営業を続けた場合

もしその店舗が感染源になったことがマスコミで広く報じられてしまうと、法的なリスクはともかく、レピュテーションリスク(評判低下)があり得ます。
しかし、営業を続けなければ売り上げが上がらず、続けていて感染源になってしまうとレピュテーションリスクがあるということで、どうすれば良いのか悩まれている方もおられるかもしれません。

私の考えですが、もうどちらでも良いと思います。
どちらを選んでもリスクがあるならどちらでも良いでしょう。
そして思い切って言いますと、まだ生じていないレピュテーションリスクの方を選ぶ方がマシという考えもできます。

弁護士 芦原修一