退職した従業員から労働審判を申し立てられました。裁判所からの答弁書の書き方を読むと、申立書の認否をするようですが認否とはどのようなものですか?
認否というのは申立書に書かれた事実、法的な主張についてどういう態度を採るかを示すものです。
事実の認否には、「否認する」、「認める」、「不知(知らない)」の3種類があります。
法的な主張の認否には、「争う」、「争わない」の2種類があります。
弁護士でなければ事実と法的な主張の区別をすることは難しいので、事実の認否の3種類を使い分ければ十分です。
「否認する」は、申立人が主張している事実は存在しないと示すことです。
この場合、労働者側はAという事実が存在すると主張し、会社側はAは存在しないと主張し対立します。
そうすると、労働審判手続きではAという事実が存在するかしないかを検討します。
「認める」は、申立人が主張している事実が存在すると同意することです。
認めることなどあるのかと思われるかも知れませんが、例えば元従業員の入社した日について主張が異なることは稀ですので通常は会社は認めることになります。
「不知」は、その言葉どおり知らないということです。
この場合、労働者側はBという事実が存在すると主張し、会社側はBを知らないと主張し対立します。
そうすると、労働審判手続きではBという事実が存在するかしないかを検討します。
「否認する」と「不知」はその対象の事実の存否について対立し、「認める」は対立しません。
このような作業を経ることで、労働審判手続きでの検討対象を絞り込みます。
つまり認否はあらゆる事実で対立して無駄な時間を使うことを避け効率的に労働審判手続きを進めるための作業なのです。
こうした作業である以上、明らかに存在する事実について否認することは労働審判手続きに非協力であるとみなされ裁判所の印象を悪くします。
この認否をする場合、申立書をコピーして直接書き込むのが効率的です。
「認める」箇所に〇、「否認する」箇所に✖、「不知」の箇所に△と印を付けるのです。
印の付け方は「否認する」を原則として、これは争っても無駄だなと認めざるを得ない事実についてのみ「認める」としましょう。本当に知らない事実には「不知」とします。
なぜ「否認する」を原則とするべきか。
それは認めてしまうとそこは対立しない事実として労働者側の言うがままに裁判所が認定してしまうからです。
もちろん、認めても差支えのない事実や認めざるを得ない事実であれば仕方がないのですが、誤って認めるべきではない事実まで「認める」としてしまうことがあります。
それを避けるために、原則は「否認する」、限定的に「認める」という方法で認否をしてください。
この回答をご覧になっても解決に至らない場合には、お気軽にお問い合わせください。