労働審判で調停が成立した場合の解決金(和解金)の相場はあるのでしょうか。あれば教えてください。
完全に固まった解決金(和解金)の相場はありませんが、ある程度の傾向を示したデータはあります。このデータに私の経験を加味します。
厚生労働省が労働審判手続きにおける金銭的解決の傾向データを発表しました。
これは公的に発表された労働審判の解決金(和解金)の相場なので一定の信用があります。
それによりますと、解雇が有効、つまり会社側が勝つ場合でも平均で2~3ヶ月分の月収に相当する金額が解決金(和解金)とされています。
これは民事訴訟に移行した場合でも完全に10vs0で会社側が勝つ場合のみだけではなく、7vs3程度の心証の場合も含んでいます。
そして労働審判委員会が解雇が有効だとの心証を労働者側に告げたとしても自分の権利を信じている労働者側が解決金(和解金)ゼロで納得するかと言うと納得しません。
納得しなければ出された労働審判に異議を申し立てて民事訴訟に移行してしまい無駄な時間が増えます。
そこで、解雇が有効だという心証であっても労働者側に納得させるために2~3ヶ月分の月収に相当する金額での解決金(和解金)の提示が必要だということです。
もちろんケースバイケースであり、個別のケースで10vs0で解雇有効という状況であれば労働審判委員会も説得の熱が上がり1ヶ月分程度の解決金(和解金)での調停が成立することもあります。
ただし、解決金(和解金)ゼロでの調停成立は労働者側にとって申立ての放棄に等しいので期待できません。
このような傾向は私自身が代理人を務めた経験からも外れたデータではありません。
なお、この解雇が有効という場合、解決金額(和解金額)に勤続年数はあまり関係してきません。
解雇が無効、つまり労働者側が勝つ場合のデータは次のとおりです。
完全に10vs0で労働者側が勝つ場合には、9ヶ月分+0.84×勤続年数の月収に相当する金額が解決金(和解金)とされていました。
しかし、この数字はデータ上も上位10%のものであるのに加えて、データが収集されてから4年以上経過した現在ではやや高い数字だと思います。
私の感覚ですと6ヶ月分+0.7×勤続年数くらいです。
多くの場合、7vs3で解雇が無効とされる場合は従来は6ヶ月分+0.84×勤続年数でしたが、最近では4ヶ月分+0.7×勤続年数くらいに下がってきています。
もちろんケースバイケースですので、リスク算定をする際には6ヶ月分+0.84×勤続年数で算定しておく方が無難です。
以上のとおり、労働審判の解決金(和解金)の傾向が見られます。
解雇有効の場合と無効の場合とで数字が変わるのはもちろん、計算式も異なることが分かります。
会社側としては、当然解雇が有効だと信じて労働審判手続きに臨みますが、それはそれとして労働審判委員会がどのように判断するかは別ですし、懲戒解雇は特に、普通解雇であっても現在の労働契約法と判例を踏まえると解雇が有効とされるハードルは非常に高いです。
非常に高いハードルであることを踏まえてリスクを算定しておくことが必要かと思います。
解決金(和解金)の相場というのはピッタリとした計算方法はなくある程度の幅があるものです。
中規模以上の会社では代表取締役や取締役会、株主に対する事前説明が必要になることも多いのでより注意してリスクを算定しておいてください。
この回答をご覧になっても解決に至らない場合には、お気軽にお問い合わせください。