上司Aからパワハラを受けているとの申告が従業員Bからありました。Bは自分が特定されるのが怖いから自分の名前をAには知らせないで欲しいと言われたのでその申し出を尊重し知らせませんでした。Aは「何となくは分かるが誰かが分からないと申し開きもできない。」という反応でした。会社としてはAがとぼけていると感じAを懲戒処分としての譴責処分にして部署異動としました。この場合の法的問題点を教えてください。
Aに対する懲戒処分が無効となるおそれがあります。今後のために何が問題かを指摘いたします。
懲戒処分というのは会社における刑事罰です。刑事訴訟において、いつどういった行為により誰がどのような被害を受けたかを明らかにして検察官と被告人が攻防してからでなければ刑事罰を下すことはできません。
それと同じくパワハラの懲戒処分手続きにおいても、どれくらいの期間、誰に対してどのようなパワハラ行為を行なったかを明らかにしなければなりません。そうしなければ懲戒処分の対象者、この場合のAとしても防御することができません。
防御ができないということは適切な弁明の機会を与えたとは言い難くなります。
そうすると、この点を捉えて懲戒処分が無効とされるおそれがあります。
確かに被害者とされるBの保護の必要性もありますが、それ以上にAは懲戒処分を受けようとしているのですから適切な弁明の機会を与えるべくBの氏名を伝えなければなりません。
Bに対する配慮としては懲戒処分手続きが開始されBの被害申告である旨をAに伝える前にAを部署異動させるなどしてAとBとが鉢合わせしないよう努めましょう。
こうしたパワハラやセクハラの申告があった場合、被害者とされる者の保護と加害者とされる者への手続き的配慮を両立させる必要がありますので、この点に注意して懲戒処分手続きを進めてください。
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