従業員が取引先で腹を立てて口論の末に先方の社員を殴ってしまいました。被害者は軽く頭を打った程度で怪我はなかったので自社従業員に対して1週間の出勤停止の懲戒処分としました。ところが、その懲戒処分の1ヶ月後に被害者が倒れて脳内出血で亡くなりました。このような場合、被害者の死亡結果を踏まえて再度の懲戒処分をすることはできますか?
懲戒処分は会社における刑事罰と同じですので、同じ事実を基に懲戒処分を繰り返すことはできません。これを二重処罰の禁止、又は一事不再理と言います。
ご質問の件ですが、弁護士としてもかなり悩ましいです。
原則としてこの場合に再度の懲戒処分をすることは二重処罰の禁止に当たります。
しかし、被害者に怪我もなくちょっとした小競り合いであったのと、被害者が死亡したという重大な結果が生じたのとでは、対象事実が異なるとも言えます。
刑事訴訟であればともかく、会社秩序の維持という観点からはこれらを同じ事実として扱うことには違和感を覚えます。
思い切って申しますと、その他の事情にも依りますが再度の懲戒処分に踏み切っても良い場合かも知れません。
被害者が死亡したことにより取引先との関係は悪化、若しくは打ち切りとなるかも知れませんし、新聞等で報道されて会社の社会的信用が低下する可能性もあります。
それを踏まえるともはや最初の懲戒処分の対象事実とは別の事実が起こったと評価しても良いと考えます。
この問題は相当難しい問題なので、弁護士に相談して法的見解を聞いたうえでご判断ください。
この回答をご覧になっても解決に至らない場合には、お気軽にお問い合わせください。