労働審判と民事訴訟の違いを教えてください。

 

 
労働審判と民事訴訟の大きな違いは、限られた2、3ヶ月で終了するか、1年から2年かかりかねない点にあります。

民事訴訟で労働問題が争われる場合、書面での主張のやり取りだけで収まることが少なく、当事者や関係者の証人尋問を経ないと決着が付かないことが多く、必然的に紛争が長期化することが常です。
公平な裁判のために必要なことではあるのですが、紛争が長期化すると会社と労働者双方にとってダメージが大きいです。
それを問題視して平成18年4月から労働審判手続きがスタートしました。

労働審判手続きが創られた経緯は紛争の長期化を防ぐところにありましたので、システムとして短期で終了するように設計されています。
労働審判手続きが申し立てられてから40日以内に第1回期日が開かれなければなりません(労働審判規則13条)。
期日は3回までです(労働審判法15条2項)。
第2回期日、第3回期日までの日数制限はありませんが、労働審判法の趣旨が紛争の早期解決にあることから近い日にちに指定されます。
民事訴訟では書面の際限のない往復が紛争を長期化させていることから、申立書と答弁書以外では主張を口頭ですることを原則とし(労働審判規則17条1項第一文)、補充書面を提出する場合には提出期限が定められることがあります(労働審判規則19条)。
書面及び口頭での主張はやむを得ない場合を除き第2回期日までに終えなければなりません(労働審判規則27条)。

労働審判手続きはこのように短期で審理されるため、書面の質を一定以上に保っておかないとリカバリーが利きません。
民事訴訟では証人尋問がありそれには双方が準備して臨みますが、労働審判手続きでは労働審判委員会が当事者に質問をしますので予定されていない質問がされることがあり準備しにくいです。

これらの点は充実した主張を尽くせないとも言えますが、紛争の早期解決は双方にとって余りあるメリットです。人にとっても会社にとってもその中心に労働紛争があるわけではないので、早く日常を取り戻すことが大切だと考える。これが労働審判手続きの設計思想です。
逆に言うと、人生をかけて白黒はっきりと決着を付けたい場合には民事訴訟で争うことになります。ただ、会社は経済的観点で動くことが多いですしそうあるべき場面がほとんどだと思います。そうするとよほど理不尽な審理や結論でない限りは労働審判手続きで解決することが合理的であると言えます。
 

 
この回答をご覧になっても解決に至らない場合には、お気軽にお問い合わせください。

前の回答 労働審判手続きの結果、会社の財産が差し押さえられることはありますか?
次の回答 元従業員から労働審判手続きを申し立てられました。民事訴訟の裁判例のような「労働審判例」を参考にすることはできますか?

ブログ記事の検索

目次
PAGE TOP