弊社では就業規則で「私用車での通勤を禁止する」と定めています。ある従業員が会社に黙って私用車で通勤しつつ定期代を受け取っていました。これを懲戒処分として良いでしょうか?
ご質問の場合の問題点は2点あります。
1つは私用車での通勤禁止に違反したこと。
もう1つは定期券を購入していないのに定期代を会社から受け取っていたことです。
まず「私用車での通勤を禁止する」規定の有効性ですが、電車又はバスでの通勤よりも事故に遭いやすく会社の社会的信用が低下しかねないことと、渋滞による遅刻が生じ得ることから合理的な規制として有効です。
ご質問の場合の従業員が会社に黙って私用車で通勤したことが就業規則違反だとして、これについて懲戒処分をすることができるかが問題となります。
仮に、これまで一度も遅刻がなく事故もなく私用車での通勤により会社秩序を乱すことが一切ないのであれば、形式的に就業規則違反であっても懲戒処分をすることはできません。
もっとも、今後の私用車での通勤を控えるよう業務命令をすることはできます。
この業務命令違反に従わない場合には、戒告処分又は譴責処分とするのが妥当です。
次に、私用車で通勤していたのに定期代を受け取っていた件について懲戒処分をすることができるかが問題となります。
定期券を購入することを前提として定期代を受け取ったのに定期代を購入しなかったことは厳密に言うと刑法上の詐欺罪に当たることがあります。
そこでポイントは故意によるものか過失によるものかです。
故意によるものであれば違法性が高いので懲戒処分をすることが相当です。
ご質問の場合は明らかに故意がありますので、後はどれだけの期間、どれだけの差額を得ていたかにより懲戒処分の内容を決めれば良いです。
差額が少額に留まるのであれば懲戒処分ではなく口頭での注意に留めても構いません。
過失によるもの、例えば引っ越しをして届け出るのを忘れていたなどであれば違法性は低いのでその期間にもよりますが口頭での注意に留めても構わないでしょう。
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