自宅待機命令も懲戒処分の一つとされる場合があると聞きましたが、懲戒処分の中ではどういう位置づけになりますか? 処分の重さはどう評価されますか?
自宅待機命令は、就業時間中の就労義務と給与支給の有無により処分の重さは異なりますが、およそ出勤停止処分と同程度の重さです。
自宅待機命令は一般的には業務命令として出されることがほとんどです。
しかし、業務命令として出されても実際は制裁を目的としている場合があり、その場合は懲戒処分として出されたと評価されます。
懲戒処分として評価されれば、後に有効性が争われれば懲戒権の濫用の有無が争点となります(労働契約法15条)。
例えば、単に転勤の合間に適切な就業場所がない場合もあれば、新型コロナウイルス感染症の影響のようにオフィスでの就業が適切でない場合にも自宅待機命令が出されます。
これらの場合は一時的な就業場所の指定であり制裁を目的としておらず、懲戒処分ではありません。
微妙なのが、懲戒処分対象行為をした際に懲戒処分の有無並びに内容が決定するまで自宅に待機せよという命令です。
自宅で待機すべき合理的理由がありそれが長期に渡らなければ、懲戒処分ではなく有効な業務命令です。
おそらく懲戒処分とされるであろう場合は、何らかの不祥事があってそれを理由として自宅待機命令を出して、その前後で一切懲戒処分の有無を検討していない場合です。
これは自宅待機命令が制裁罰として機能してしまっているので懲戒処分の一つとされます。
懲戒処分には、軽いものから戒告処分、譴責処分、減給処分、出勤停止、降格処分、諭旨解雇、懲戒解雇、があります。
この中で自宅待機命令に類似しているのは出勤停止です。
出勤停止は就労義務を一定期間強制的に取り上げて会社に出勤することを許さない処分です。
その一定期間の就労義務がなくなる代わりに会社の給与支払義務もなくなるのが原則です。
この場合、その一定期間中の自宅での就労義務がなく、極端な話遊んでいても構いません。
なぜなら、労働者は就労義務から解放されているからです。
つまり、出勤停止は就労義務がなく無給の懲戒処分です。
これに対し、自宅待機命令が制裁罰として機能する場合ですが、就業時間中の就労義務と給与支給の有無により懲戒処分としての重さが異なります。
- 就労義務がない場合で無給であれば出勤停止と同程度の処分です。
- 就労義務がない場合で有給であれば出勤停止よりも軽い懲戒処分です。
- 就労義務があれば有給とせざるを得ず、この場合に就労義務がない出勤停止とどちらが重いかは微妙ですが、自宅待機義務を課している点で出勤停止よりもやや重い懲戒処分だと言えます。
この最後のパターンの自宅待機命令が出された裁判例について下のページで触れましたので、そちらもお読みください。
この回答をご覧になっても解決に至らない場合には、お気軽にお問い合わせください。