社員旅行の宴会で男性部長Bが女性従業員Aの手を握りお尻を触り逃げたAに「犯すぞ!」と言いました。Bを懲戒解雇できますか?
典型的なセクハラ事案です。
しかし、これと同様の事案で懲戒解雇は無効とされたものがあります(東京地裁平成24年4月24日判決)。
この裁判例では、これ以外にも複数の女性従業員に対してセクハラ行為をしているのですがそれでも懲戒解雇は無効です。
ただし、これはあくまでも懲戒解雇が無効とされただけで、セクハラ行為ではないとされてはいません。他の軽い懲戒処分、又は普通解雇なら有効とされた可能性はあります。
この裁判例で拾われた男性部長Bに有利な事情は次のようなものです。
・初めての懲戒処分であること
・Bの配転・降格で対処できなくはないこと
・Bが被害者らに対して報復的行為に出ればそのときに懲戒解雇すれば良い
・手を握りお尻を触る程度に留まり強制わいせつとは一線を画する
・秘密裏にされておらず衆人環視の元になされており行為の限界があること
・「犯すぞ!」も真に乱暴する意思で出た言葉ではないこと
・これまで会社に貢献してきたこと
・反省の情があること
これはひどいと思われる事案でも懲戒解雇が無効とされるケースでは、懲戒解雇とされる前の勤務態度が良く懲戒処分を一度も受けていないことが挙げられる傾向にあります。
次に、セクハラ事案では強制わいせつに至らないことと1対1の秘密裏になされていないことは相当重視されます。行為の侵害度と危険度が一線を超えていないいうことです。
このご質問では、強制わいせつには至っておらず1対1の秘密裏になされていません。
後は、Bのこれまでの勤務態度が悪く懲戒処分歴がない限りは懲戒解雇とするのは避けて、普通解雇又は出勤停止や減給処分に留めるべきです。また、AとBとが同じ部署、職場ならそれを離すように基本はBを配転させてください。
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