従業員Aから「別の従業員Bからセクハラを受けてます。」との申告がありました。これにどう対応するべきでしょうか?

 

 
会社の法的リスクを検討します。

セクハラの事実が本当なら、BがAにセクハラをしていたことを会社が放置したと見られて安全配慮義務違反に問われる可能性があります。
会社には安全配慮義務として従業員のために職場環境を適正なものに保つ義務があるのです。
この場合、既に起こった事実は消せませんが会社としてAに配慮し、Bに懲戒罰を与えるなどしなければAに対して与えた損害が拡大したと見られて会社のダメージが大きくなります。

注意するべきは、Aの申告が真実のように聞こえたからと言って直ちにBがセクハラをしたと決め付けてBを糾弾することのないようにすることです。もしセクハラの事実がなかったならばBに対する扱いが違法だとされかねません。
Bやその他周囲の従業員からも聴き取りをして実際にあった事実は何かを確定させましょう。

もしセクハラの事実がなかった場合、Bに疑いを掛けたことを謝罪しましょう。なお、この時に謝罪で済むような聴き取りをしておくことです。
そしてAへの対処はケースバイケースです。
もしかすると精神疾患で妄想を告げそれがたまたま合理的なストーリーに見えたので会社も疑えなかったのかも知れません。精神疾患なら通院を勧めましょう。
男女関係のもつれであることないことを言ったのかも知れません。この場合には私的な関係のもつれでBについて讒言したことについてAを注意するか戒告処分を検討しても良いでしょう。
AがBの部下でBからの厳しい指導に逆恨みをしたのかも知れません。指導の厳しさが度を超えていればこれは新たな問題でパワハラかどうか検討しましょう。指導の厳しさが許容範囲ならAに対してはその旨を上層部から改めて指導しましょう。Bに対しては厳しさがこういうことを引き起こすリスクがあることを説明しましょう。
以上のように、それぞれのケースに応じて対処しましょう。

セクハラの事実があったとすると、AはBに対して損害賠償請求をする権利がありますし、最初に申し上げたとおり安全配慮義務違反で会社にも損害賠償請求をする権利があります。

こうした損害賠償請求についての方向性をAから聴き取っておくことは有益です。Aは会社にどうして欲しいのかを知っておけば適切な対処ができるからです。
ただ、聴き取り時に「会社に恨みはなくBさんに償ってもらいたいです。」とAに言われたとしても会社の法的リスクは消えないので鵜呑みにはしないでください。

AとBとが同じ部署、同じ職場であれば、会社にとってのAとBの存在とAの意向を聴き取り、AかBのいずれかを別の部署、職場に配転させることも一つです。

「Bさんを厳しく処罰して欲しい」というAの意向があれば特にBに対する懲戒処分を慎重に検討しましょう。
特に、と書いたのはそうしたAの意向がなくても懲戒処分を検討するべきだからです。
ここで注意するべきはAの意向を重視するあまりにBに対して厳し過ぎる懲戒処分をしてしまうと、今度はBから懲戒処分無効確認請求をされる可能性が出てきてしまいます。
Aは被害者なのでその意向は考慮要素の一つとして懲戒処分を検討するのが妥当です。

AはBに対して個人的に損害賠償請求をする権利があるので、会社はそれに積極的に関与しない方が良いです。そもそもAの権利行使を阻止できる立場ではないですし、Aに恨まれて「やっぱり会社も訴えよう」となるおそれがあります。

Aさんが会社の安全配慮義務違反で損害賠償請求をしてきたら賠償金額次第でそれを受け入れるかどうかを判断します。
もし余りも高額の賠償請求であれば止むを得ませんが法的に反論しましょう。

・会社内外で起こったことか、社外での飲み会なら会社の指揮命令の範囲外として安全配慮義務がなかったとされることがあります。
・業務時間外であれば安全配慮義務がなかったとされることがあります。
・上司部下の関係ではなく業務と無関係であった場合、安全配慮義務がなかったとされることがあります。
・会社がセクハラ防止措置を適切に採っていれば安全配慮義務がなかったとされることがあります。

以上の点を踏まえて、セクハラ問題に対処しましょう。
 






 
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