労働審判手続きについて具体的にどのように進められるのか、当日の流れを細かく教えてください。

 

  
会社側と労働者側双方が受付を済ませ揃ったら労働審判委員会の準備さえ整っていれば、裁判所書記官が呼び出しに来ます。
東京地方裁判所ですと担当部署の部屋に通されることもあれば、1階下の会議室に通されることもあります。

労働審判委員会の3人が正面に座り、向かって申立人(労働者)と申立人代理人弁護士、並びに相手方(会社側)と相手方代理人弁護士が左右に分かれて座ります。
特に決め事はないのですが、労働者側が左(労働審判委員会からは右)、会社側は右に座ることが多いように思います。

労働審判官が自己紹介をして、左右の2人の労働審判員を紹介するか、労働審判員自身が簡単に挨拶をします。

そしてすぐに紛争の争点整理に入ります。
既に申立書と答弁書とで双方が争うべき争点が明らかになっていることが多いので、それの再確認をするといった形で進められます。

労働審判委員会は各争点がどういった事実かを確定させたいので、そのために労働者側と会社側に質問を重ねます。これを審尋と言います。民事訴訟とは異なり、互いの代理人が当事者に質問をするという形ではありません。

同じ点について双方に質問することで矛盾点、不合理な点を炙り出す作業とも言えます。
このとき互いに真っ向から主張が対立する場合、「嘘だ!」と感情的になる方がいますが良いことではありません。裁判所でさえ感情的になるのだから会社業務中も感情的に人に接しているのだろうという印象を労働審判委員会に与えることになりマイナスです。

また、民事訴訟では代理人弁護士が裁判官からの質問に答えますが、労働審判手続きでは基本的に当事者が回答します。
これは、審尋が事実の確定作業なので事実を直接知っている当事者が回答するべきだからです。
法的枠組みを把握していないと労働審判委員会からの質問の意図が分からずズレた回答をしてしまうことがあります。そのときは代理人弁護士が質問の意図を当事者に丁寧に説明して回答しやすいように計らいます。
事実から離れて大きな枠組みで会社側としての法的主張をどうするか、どういう意図でこの主張をしているかなどは代理人弁護士が率先して発言します。

こうして争点整理と争点に関する審尋がひととおり終わると、会社側と労働者側は一旦退出します。
そして労働審判委員会3人が審尋を踏まえて評議に入ります。
評議では各争点について会社側の主張どおりか、労働者側の主張どおりかを話し合います。
争点に関する判断が定まって会社側と労働者側のどちらをどの程度勝たせるかの心証が定まれば、会社側か労働者側の一方のみを部屋に招き入れます。
ちなみに評議の間、当事者は裁判所の廊下のパイプ椅子か同じ階の待合室かで座って待っています。部屋に入るべき時は裁判所書記官が呼びに来ます。

労働審判官にも依りますがある程度の勝ち負けの心証が当事者らに伝えられます。
そして会社側と労働者側の結論(解決金をいくら支払うか)には隔たりがあるものですが、そこからどれだけ譲歩するかを確認します。

労働審判手続きにおいて会社側は防御側であって労働者から金銭を貰う立場ではありません。
したがって、ここでは「解決金としていくらまでなら支払うか。」という基準を作ることが必要です。
この基準は、会社としての許容範囲がいくらかという観点と、この事案でもし民事訴訟になればどういった判決が出されるかの観点、そして労働審判手続きが終了し民事訴訟に移行した場合の時間的コストの観点とで作り上げます。
この基準に近い金額を労働者側が提示しているのであれば、この期日(大抵は第1回期日でしょう)で和解し調停を成立させるべきです。
基準を大幅に超える不合理な要求に固執しているうちは無理に和解をしなくても良いと思います。この場合は和解せずに労働審判を出してもらった方が良いですし、その先の民事訴訟で判決をもらった方が良いです。

概ね解決金額の折り合いが付けば、労働審判委員会が双方を部屋に招き入れて和解が整って調停条項のすり合わせをすることを宣言します。
いくらの解決金をいつまでに支払うか、ほとんどの場合は一括払いとされますが事情により分割払いも可能です。
第三者に労働審判手続きについて口外しないという口外禁止条項を付けるかもポイントとなります。
調停条項を労働審判官が読み上げてそれを双方の代理人弁護士が確認し問題がなければ、後日近いうちに第〇回労働審判手続期日調書(調停成立)というタイトルを付けた書面が作成されます。これは代理人弁護士が裁判所まで取りに行くことも多いですが、遠方の裁判所だと郵送にします。

調停が成立したと言っても労働紛争で対立していた当事者同士なので、代理人弁護士はそれに配慮して一緒のエレベーターに乗らないようタイミングをずらすこともあります。

以上が期日の流れであり、労働審判手続きの具体的な流れです。
 

 
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