最近、東証一部の会社で社長が従業員を罵倒した音声データが流出したそうです。これはパワハラでしょうか? もしパワハラだとしたら社内でこの社長を懲戒処分にすることは可能なのでしょうか?

 

 
完全にパワハラです。

しかし、懲戒処分は従業員に対するものであって社長を含む取締役を規律するものではありません。
したがって、この暴言を吐いた社長を懲戒処分にすることはできません。

ただ、従業員がこうした暴言を部下に吐いた場合にどういった懲戒処分が妥当かを検討する価値はあります。

パワハラ加害者に対する懲戒処分の判断基準について詳しくはこの上のリンクの中で解説していますが、ここではこの社長の暴言をその判断基準に当てはめてみます。
まずは、報じられた記事を読んでみます。

東証一部上場企業「Casa」の社長が社員に罵倒繰り返したと「週刊文春」が報道

この記事によると社長はこの暴言により書類送検されたとあります。
東証一部の社長が書類送検されたとなると大ごとではありますが、書類送検というのは本格的に警察が検察に事件として届けていないということですので、弁護士の感覚からすると違法性がそれほど高くないのかなと思います。
したがって、この暴言が明確な犯罪行為と言うほどではなく、侮辱的な人格否定及びそれに匹敵する罵倒だとして★3です。
この★による評価は上の「パワハラに対する懲戒処分の判断基準と相場」において詳しく解説しています。

被害者は少なくとも3人とされていますので★1を加算します。
罵倒を繰り返していたとありますがそこは事実として確認できないので考慮しません。
4時間にわたり罵倒し続けたとあるので★1を加算します。
経営者側に準じた地位として★1を加算します。
大声で怒鳴りつけているので★2を加算します。
机を叩くことまでは確認できませんがボールペンのようなものを叩きつけている音声が確認できますので、★1を加算します。
ただ、今回の被害者は怒りのあまり社長の胸倉を掴んでいます。これ自体は理解できるのですが社長からの一方的な攻撃ではなく少しは反撃していることで☆2を減算します。

以上を踏まえると★7となります。
★7は減給処分から降格処分を検討するのが妥当です。

解雇はできないのか?と疑問に思われるでしょうがもし懲戒解雇をしてそれが裁判所で争われると重過ぎると判断されてしまう可能性があります。
この場合、被害者が5人以上となると特定の誰かというより誰彼構わずパワハラをしていたということで会社の秩序を乱した程度が大きく評価され、懲戒解雇も視野に入ってくるものと考えます。

暴行には至らず暴言に留まっていること、そして被害者が加害者の胸倉を掴むという暴行に及んでいることが思ったより軽い懲戒処分の予測に繋がっています。


 

 
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