どの程度の行為があれば有効な戒告処分・けん責処分を下せるのでしょうか? 懲戒処分のうち戒告処分・けん責処分は軽い処分なのでちょっとした行為でも処分を下せますか?

 

 
さすがにちょっとした行為での懲戒処分は無効となりやすいですが、仰るとおり戒告処分とけん責処分は軽い処分なので会社秩序を明らかに乱した証拠さえあれば処分を下すことができます。

戒告処分は訓告処分と言われることもあります。
会社が一方的に口頭又は書面により注意指導を与える懲戒処分です。

けん責処分は注意指導を与える点では戒告処分と同じですが、反省文の提出をさせる点が異なります。

戒告処分とけん責処分は、それ以外の減給処分、出勤停止、降格処分、諭旨解雇、懲戒解雇とは質的に異なる軽い懲戒処分です。
なぜなら、それら以外は処分以降も何らかの効力が継続するのに対して、戒告処分とけん責処分は処分の瞬間に効力が終わるからです。

それだけ軽い処分なので裁判所で争われた場合に有効性が認められやすくはありますが、それでも無効とされる場合はあります。

懲戒処分の対象行為は様々ですが例えば、非正規社員の1人が他の非正規社員に対して会社がするリストラへの対策を書いたメールを送信した件についてけん責処分とされた事案で、東京地裁は「メールの内容は法的根拠に基づいていて誤った情報ではなく、会社の信用を棄損はしておらず他の非正規社員の不安を煽ってもおらずメール送信という手段も相当であった。」としてけん責処分を無効としました(東京地裁平成25年1月22日判決)。

懲戒処分は会社の秩序を守るための制裁罰ですので、会社の秩序を不当な形で乱したかが問われます。
この事案では、不特定多数の社外の人間にメッセージを送ったわけではなく、メールの内容も法的根拠に基づいた正しいものであって、非正規社員が会社の上司に進言しても聞いてもらえないと思うのもやむを得ないから、他の非正規社員にメールを送信したことは不相当ではないとされ、不当な形で乱したとは言えません。

したがって、これとは逆に不特定多数の社外の人間にメールを送信したり、法的根拠に基づかずことさらに他人を煽り会社と対立させるようなメッセージを送ったりしていれば、けん責処分は有効だと判断されたと思います。

なお、会社社宅で中傷ビラを撒いた行為についてのけん責処分を有効とした最高裁判例(最高裁昭和58年9月8日判決)があります。
これは「中傷ビラ」という正当化できない手段で会社と対立して会社秩序を乱したためにけん責処分が有効とされました。

一例として会社批判のパターンを挙げましたが結論として、不当な形で会社秩序を乱したと評価できれば戒告処分・けん責処分は有効となりやすいと言えます。
 

 
この回答をご覧になっても解決に至らない場合には、お気軽にお問い合わせください。

前の回答 懲戒処分のうち出勤停止はどの程度の行為があれば有効な出勤停止とされるのでしょうか?
次の回答 懲戒処分のうち降格処分はどの程度の行為があれば有効な降格処分とされるのでしょうか?

ブログ記事の検索

目次
PAGE TOP