このたび従業員が病気療養のために退職します。本人の病状が重いので奥さんとやり取りをしていますが、退職金を奥さん名義の銀行口座に振り込むことは何か問題はありますか?
法的リスクで言うと、奥さん名義の銀行口座に振り込んだ後に本人から「まだ退職金を受け取っていないのですが…。」と言われるリスクがあります。
本人の病状が重くその治療費等に退職金を充てなければならない事情があれば、なおさら奥さん名義の銀行口座に振り込みたいところですが、会社にとっては二重払いの危険が生じますので慎重に対応しましょう。
本人の病状が重く家族が賃金を受け取らざるを得ないなどの事情がある場合には本人の使者として家族が賃金を受け取ることは許されます。
ただし、ここで問題なのは後になって本人が「退職金を受け取っていないのですが。」と言ってきたときに会社が「いや、使者の奥さんに支払いました。」と答えてそれで会社は再度の退職金の支払いを免れられるかです。
そこで、病状が重いので使者として妻に退職金を受領させる旨の本人名義の書面、その書面に押印した印鑑が本人のものであることの印鑑証明、診断書を奥さんに求めてそれにより奥さんに直接現金を渡しましょう。
退職金は多額になることが多いので現金払いは危険ではありますが、奥さん名義の銀行口座に振り込むことは使者に受領させることを超えたものと見られてしまいます。なぜなら、それが可能なら本人名義の銀行口座に振り込めば十分だからです。
したがって、以上を踏まえて奥さんに対応をお願いしましょう。
もし現金での受領を奥さんが渋るか、本人が書面作成できないほど病状が重ければ、原則に立ち返り本人名義の銀行口座に振り込んでください。
この場合、本人に後見人を付けることで後見人が銀行口座を管理できます。
この回答をご覧になっても解決に至らない場合には、お気軽にお問い合わせください。