弊社の就業規則には退職金に関する規定はなく、また退職金規程もありません。この場合、個別の労働契約書で退職金支給に関する契約を結ぶことは法的に有効とされますか?
一般的に、退職金の支給については就業規則かそれを受けた退職金規程により計算方法等が定められます。
ただし、退職金の支給も労使間の取り決めの一つですので個別の労働契約により退職金支給に関して定めることは有効です。
就業規則において退職金支給に関する定めを置く場合、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項について定めることが義務付けられていますが(労働基準法89条3の2号)、個別の労働契約において退職金支給に関して定める場合にはこれらの義務は生じません。
しかし、しっかりと退職金支給に関して定めたいということであれば個別の労働契約においてもこれらの事項について定めておくことになりますが、会社にとってかなりの負担となります。
就業規則に定めてしまうと全従業員に適用されてしまうので個別の労働契約で定めておきたいということであれば理解はできますが、そうでなければ就業規則で定めておく方が採用の都度労働契約の内容を吟味する負担が増すのでお勧めはできません。
また、個別の労働契約で退職金支給の有無が分かれたとしても、多数の従業員に対して退職金を支給する慣行となってしまうと、個別の労働契約で退職金を支給する定めを内容としなかった従業員に対しても退職金支給義務が生じてしまう可能性が僅かにあります。
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