懲戒解雇した元従業員から退職金請求されています。懲戒解雇をすれば退職金を支払わなくても良いので、この請求はおかしいのではないですか?

 

 
必ずしもおかしいとまでは言えません。
この問題は2段階で検討する必要があります。

まず、就業規則や退職金規程に「懲戒解雇の場合は退職金は不支給とする」旨の記載があるかです。
もしこれがなければ、一般的には懲戒解雇をするほどのことをしでかした従業員に退職金を支給するべきではないとしても、退職金を支払わなければなりません。

次に、就業規則等に「懲戒解雇の場合は退職金を不支給とする」旨の記載があったとしても、「長期間の勤続の功を抹消又は減殺してしまうほどの著しく信義に反する行為があった場合」に限定してその退職金不支給条項が有効とされるのが裁判例です。

会社の立場からすると懲戒解雇をするほどの行為はすべて「長期間の勤続の功を抹消又は減殺してしまうほどの著しく信義に反する行為」だと思ってしまいますが、裁判所はそこまでとは捉えていません。これは退職金のことを功労報償的であると同時に賃金の後払い的性質を持つと捉えていることが影響しているのかも知れません。

この「長期間の勤続の功を抹消又は減殺してしまうほどの著しく信義に反する行為」の判断基準ですが、これまでの勤務態度、勤務期間、会社に与えた損害、行為の悪質性、などを総合考慮して判断されます。
多くの裁判例ではひどいと思われる行為があったとしても3割支給を命じるものが多いです。

退職金を不支給、つまりゼロとして良いケースとしては次のようなものがあります。

 ・多額の会社金員の横領行為
 ・部下を強姦(強制性交)した行為
 ・競業会社の役員に就任して競業避止義務に反して利益をあげていた行為

これらは本当にひどい行為ですがこれに近い程度の行為でなければ最終的に裁判所で退職金の完全不支給と判断されることは難しいということです。
 

 
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