不当解雇だと訴えてきた元従業員がいますが、探偵に依頼して再就職したかを調査する価値はありますか?もし再就職していたら弊社に戻る気はないので解雇にまつわる紛争で弊社が勝てますか?
はい、探偵に依頼して再就職したかを調査する価値はあります。
再就職が発覚した場合、会社にとって次のような効果が期待できます。
- 解雇無効であっても元従業員に支払う金額を一定程度に抑えられる。
- 解決金(和解金)を支払わなくても済む
解雇無効であっても元従業員に支払う金額を一定程度抑えられる
再就職したかどうかはあくまでも解雇後の事情であり、解雇の有効性は解雇時点での有効性で判断されるので、再就職していたとしても解雇にまつわる紛争で貴社が勝てるわけではありません。
この場合に価値があるのは、再就職していて復職の意思が失われたと認定されると再就職時点以降の給与を支払わなくても良いところにあります。
つまり、解雇の有効性の判断には関係がなく、解雇が無効とされて会社が負けた場合であっても元従業員に支払う金額が少なくなるということです。
さて、解雇が無効とされた場合に、無効な解雇は違法であって違法な解雇により就業を妨げられたのだから労働者は解雇後に就労していなくてもその間の賃金をもらえます。この賃金のことをバックペイと言います。
解雇にまつわる紛争で会社にとって厄介なのはこのバックペイです。
紛争が長引けば長引くほどバックペイが積み上がってしまい、会社が負けた場合に支払う金額が跳ね上がるのです。
再就職が明らかになった場合、復職意思がなくなったと判断されればその復職意思がなくなった時点以降のバックペイを会社が支払う義務がなくなります。
ご指摘のとおり再就職した事実は貴社に復職する意思が薄れているか、それがないことが多いです。
しかし、単に再就職したというだけでは復職意思を失ったとは見られません。
再就職プラスアルファの事情により、「復職意思を失った」と認定されなければならないのです。
・再就職先での地位(正社員か、アルバイトか)、
・給与額(貴社より多いか少ないか)、
・貴社と再就職先の会社のいずれを優先するであろうか、
といった事情を踏まえていつ復職意思を失ったか、または失っていないかが判断されます。
要は一時的に生活のために再就職したのかどうかということです。
なお、復職意思が残っていると判断された場合でも再就職先で給与を受け取っていますので本来はその中間収入を全額控除してバックペイを支払えば良いと思われます。
しかし、労働基準法26条により再就職先の会社からどれだけ高い給与を受け取っていようとも、解雇した会社で定めた給与の60%はバックペイとして支払う義務が残ります。つまり中間収入による控除は40%が限度です。
もっとも、再就職先の会社の給与の方が貴社の給与よりも高ければ復職の意思が失われたと判断される可能性が高いとも言えますが。
解決金(和解金)を支払わなくても済む
そして解雇無効の場合にこのバックペイに加えて給与3ヶ月分から12ヶ月分の解決金(和解金)が発生しますが、これは元従業員に会社に戻って欲しくないために、解決金(和解金)を支払って自主退職してもらうためのものです。
これについてはケースバイケースですが、再就職先が一時的なアルバイト程度であれば前記の解決金を支払わなければ紛争は解決しません。なぜならアルバイトを辞めて貴社への復職が可能だからです。
しかし、再就職先でしっかりと働きたいようであるならば、解雇無効とされてもそもそも貴社に復職できないので、自主的に退職してもらうための解決金を支払う必要はなくなります。
この回答をご覧になっても解決に至らない場合には、お気軽にお問い合わせください。