会社の合併を検討しています。この場合、それぞれの従業員との労働契約の内容はどうなるのでしょうか? どちらかに合わせるのか、それぞれがそのまま残るのかを含めて教えてください。
これは法的にどちらとも決められていません。
A社とB社とが合併してA社の就業規則に統一しても良いですし逆もまた然りです。A社のともB社のとも異なる別の就業規則を作成しても良いです。
ただし、就業規則の変更は要件が厳しいので、両社のどちらのとも異なる就業規則を作成することはお勧めしません。
少なくともどちらかに合わせるのが良いです。
A社の就業規則の方が労働者に不利な場合にその就業規則を統一的な就業規則とした場合にB社の従業員がその不利益変更について争うことがあります。
会社の合併は2つの会社が1つになるので一般的には労働条件を統一する必要があります。
最高裁も「従業員の労働条件が異なる複数の農協、会社等が合併した場合に、労働条件の統一的画一的処理の要請から、旧組織から引き継いだ従業員相互間の格差を是正し、単一の就業規則を作成、適用しなければならない必要性が高いことはいうまでもない。」と示したことがあります(最高裁昭和63年2月16日 大曲市農協事件)。
同判例では就業規則の不利益変更について「賃金、退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については、当該条項が、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容できるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合においてその効力を生ずる。」と示されました。
そのうえで、退職金は減額されたものの旧規程よりも賃金は増額されていて全体の減額の程度は小さい一方、労働条件変更の必要性の高さ、休日・休暇等の取扱いは有利になったことと定年が延長されたことを踏まえると新規程への変更は有効であるとしました。
就業規則についての不利益変更については、労働契約法10条で「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。」と定められています。
この定めは仮に労働者の同意がなかったとしても不利益変更が有効である場合の要件を示しているのですが、正直に言ってこの要件を充足させるのは難しいです。
したがって、この労働契約法10条の土俵に立つよりも可能な限り労働者の個別の同意を得ておくことが重要です。
もっとも、合併に伴う就業規則の不利益変更については、労働条件変更の必要性が高いのでそれなりに代替措置をとり経過措置をとれば不利益変更が有効とされる可能性が高まります。
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